片山津の伝説 「竜神と娘」
柴山潟が今よりずっと大きく、片山津の村がとても貧しかった時代の話てす。
いつしか湖におろちが棲むようになりました。
夜中になると村人を襲ったり、近くの家を荒らすのもしばしば。
困りはてた村人たちは「なんとか村をお守りください」とお薬師さまに
お参りをかさねたのです。
それから何日か経った後、ひとりの美しい娘が倒れているのが見つかりました。
村人たちは心からの看病をしたのですが夜になると姿がありません。
娘はいつのまにか湖のほとりに来ていたのです。
「あぶないっ。あんなところにいたらおろちに食われてしまう」
村人たちがそう思った瞬間、突然おろちが大きな口を聞き、湖面から現れました。
しかし娘は逃げもせず、手にもつ琵琶をかき鳴らしはじめます。
それはたいへんうっとりする音色で、おろちの顔つきまでやさしくなって
しまったそうです。
「おまえは今、生まれ変わった。これからは竜神として村の守り神となれ」
そういうと娘は天へ、おろちは水中へと消え、二度と姿を見せませんでした。
村人たちは、娘をお薬師さまの命を受けた弁天さまに違いないと噂しあったそうです。
その後、柴山潟から湯源が発見され、片山津は北陸屈指の温泉街へと発展しました。
湖にある浮御堂と竜神像は、人々の感謝をしるして建てられたものです。